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施工事例|商業空間

&TAO archit.

 

築37年のビルを、スタートアップの居場所になるテナントビルへ。

西鉄大橋駅から徒歩約9分。繁華街からほど近く、人通りが多い街の中に、そのビルはあります。
『&TAO archit.』は、2023年にリニューアルオープンしたばかりのテナントビル。外壁に貼られたヴィンテージ風のタイルとレンガが、深い味わいを感じさせます。
昭和62年に建築されたこのビルは、元々店舗兼住居として建てられたもの。30年以上もの間、様々な店舗がこのビルに入居し、街に彩りを与えてきました。
しかし、時代は流れ、長年ここで生活されていたご家族も、とうとう居を移すことに。ビルは築35年目にして、存続の岐路に立つこととなりました。

 

 

3つのキャンパスに囲まれる街で、若い挑戦者に居場所を。

そんな経緯を持つビルを購入し、リノベーションを依頼されたのは、美容室を経営するO様でした。
長年、福岡の地で美容業界に身を置き、活躍されてきたO様。次のステップとして選択したのが、このビルのリニューアルだったのです。
O様が持つ一番の思いは、「スタートアップを応援したい」ということ。その根幹にあるのは、O様自身がもつ経験でした。
というのも、ヘアサロンをはじめとする美容業界は、若いうちに独立し、自分の店を持つ人が多い世界。独立は大きなチャンスではあるものの、開業資金のやりくりは、若い世代にとっては高いハードルです。開業する場所だって、美容にふさわしく、清潔感があり、デザイン性が高いものでなければなりません。
ビルがある西鉄大橋駅近辺は、3つの大学のキャンパスを有し、若い世代がひと際多いエリア。サロンのニーズも高く、独立開業するにはうってつけの場所です。
「リーズナブルな賃料で、サロンを開業できるほどの設備があり、個人が挑戦できる場所を作りたい。」
そんなO様の強い願いを理念として、テナントビル『&TAO archit.』のプロジェクトが始まりました。

 

 

限りある予算でも、充実した設備を。

建築士と二人三脚で考案した、ギャラリーのような共用部。

プロジェクトが進むにつれ、第一の課題となったのは「予算」のこと。
テナントにサロンが入ることを想定すると、共用部の設備やデザインには、相応のこだわりが必要でした。
予算に限りがある中、設備を充実させるにはどうすべきか?そんな課題を解決したのが、建具の一部を「施工主支給」とすることでした。
施工主支給とは、文字通り、必要な建具を施工主みずからが用意すること。工事の費用を一部節約できるメリットがある半面、支給する建具に関する知識や、工事のスケジュールに組み込むための行程作りが重要となります。
今回は、共有部のトイレに設置している小型の拡大鏡や、テナント出入口に設置しているドア、会議室の照明などを施工主支給とさせて頂きました。
また、テナントの廊下部分は、支給されたドアにあわせて設計されたもの。
「アートを展示したい」というO様のご希望にあわせ、飾られるアートがより映えるように、シックスパネルのドアと同じデザインの腰壁を造作しました。
共有部を欧米のギャラリーのようなデザインに統一することで、数々のアートがより映えるように設計しています。

 

 

1階のレイアウトを大きく変更。

建物のつくりを活かし、アートを展示できるエントランスに。

課題は予算のことだけにとどまりません。ビルの構造にも、問題がありました。  
元々このビルは、テナントスペースだったのは1階部分のみ。住居だった2階と3階へ行くためには、建物の裏側へ回らなくてはなりません。しかも、裏側行くための通路は長く、狭く、とても実用的とは言い難い状況でした。
テナントビルとして生まれ変わらせるためには、2階へもっと気軽にアクセスできるよう、改善しなくてはならなかったのです。

 

 

この問題を解決したのは、「1階レイアウトの大きな変更」でした。
まず、路面店舗である1階のテナントスペースを削り、通路を拡張。
間接照明や、ポストスペースも設けて、エントランスフロアとして整備しました。
また、長い通路を活かし、壁面にアートを展示するための「ギャラリースペース」を造作。見る人を楽しませ、お客様がテナントに入りやすい空気感を演出しています。

 

 

変化に富む街の中で、変わらない居場所であるために。

全9室のテナントは、グレーの床と壁紙で、シンプルに統一されています。
2階と3階の部屋はどれも10㎡前後と、サロンの開業に必要なスペースをちょうど満たす広さ。個人事業のオフィスとしても、ちょうどいいサイズ感です。
同じエリアにあるテナントは、15㎡以上の広い店舗が多く、家賃も高めに設定されています。
それもそのはず、西鉄大橋駅は特急の停車駅であり、テナントのニーズも多い場所。ワンフロアそのままを1店舗として貸し出しても、空室のリスクが低いエリアです。
しかし、それでは、スタートアップのニーズには合いません。
O様の願いは、あくまで「個人が挑戦できる場所を作ること」。できるだけ賃料を安くするために、10㎡という広さでフロアを区切ることになったのです。
挑戦は、成功する時もあれば、そうでない時もあります。
これから入居するテナントの方々が、どのような道を歩もうとも、展示されているアートのように、『&TAO archit.』は変わらずに、居場所であり続けます。

 

業態
テナントビル
構造
鉄骨造
専有面積
208.80㎡
オープン日
2023年9月

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